大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)130号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の審決取消事由について判断する。

1  本願の実用新案登録請求の範囲の記載が請求の原因二のとおりであることは当事者間に争いがなく、右事実によれば、本願考案の要旨が右登録請求の範囲に記載されたとおりのものであることが認められる。

そして、右本願考案の要旨に示された「人形等の芯体」における「人形等」とは、ひとがたの人形のみを意味せず、広く動物や植物その他任意のものの形態を模した物品を意味することは、右登録請求の範囲の「人形等所求物品の芯構成体」、「人形等の芯体」との記載及び成立に争いのない甲第二号証の一・二により認められるところの本願明細書(昭和五四年八月六日付手続補正書による補正後のもの)の考案の詳細な説明の項の「本考案は上述のとおりであるから、……単に人形に止まらず、動物、植物等所求物品に付いても各適宜の表装体を以て被覆し、上記彎曲個所を彎曲することによつて各種多様の形象を表現し得る効果を有する。」との記載に照らし明らかである。このように本願考案における「人形等」が広く任意のものの形態を模した物品を意味するものと解される以上、これらの物品の芯構成体を設けるに当たり、これを必らず胴部、腕部、脚部、頭首部に分割した芯構成体とする必要がないことは明らかであり、右登録請求の範囲の記載からも右のように分割することが本願考案の要旨とされているとは到底認めることができない。

一方、成立に争いのない甲第三号証によれば、引用例には人形胴と手足部、足先部に分割した人形の芯構成体を設け、これら分割個所を接続するに際し、要彎曲部の各部へ針金又は針金製支杆を挿通し、これによつて接続した人形の芯体が記載されていることが認められるから、審決が本願考案と引用例記載のものを比較し、「人形の各所要分割部片を接続する芯体の材料以外に、両者には実質上の差異がない」(審決の理由の要点3)と認定したことは相当である。

原告は、本願考案において、胴部、腕部、脚部、頭首部は分割され別個に構成されていることが必須の要件である趣旨の主張をし、これを前提に種々審決の認定判断を論難するが、前叙の理由によりいずれも失当であつて採用できない。

2  次に、本願考案の「アルミニウム杆その他の堅牢な彎曲、復元自在な可撓杆」と引用例の「針金製支杆」を対比すると、前掲甲第二号証の一・二によれば、本願考案の可撓杆はこれを彎曲又は伸展することにより「各種多様の形象を表現し得る効果」を奏するものであることが認められ、前掲甲第三号証によれば、引用例の針金製支杆は、「該針金製支杆(8)ノ屈折ニヨリ上ケ足駆ケ足等ノ如キ任意ノ姿態ヲ形成セシメ得ル」効果を有するものであることが認められ、両者とも、分割された芯構成体に対し任意の形象を与え得るものである点で一致することが認められる。そして、本願考案の可撓杆は「堅牢な彎曲、復元自在な」ものでなければならないが、この要件が可撓杆を構成するアルミニウムその他の材料の持つ性質を規定する以上の意味を有しないことは前記本願の実用新案登録請求の範囲の記載に照らし明らかである。一方、引用例の針金製支杆も杆であつて、この点で本願考案の可撓杆と異なるところはなく、針金の材料として可撓性を有するアルミニウム、銅、鉄等が用いられていることが本願出願前周知のことがらであることは当裁判所に顕著な事実であるから、引用例の針金製支杆の材料としてたとえばアルミニウムを選定し、もつて本願考案の「アルミニウム杆その他の堅牢な彎曲、復元自在な可撓杆」とすることには何らの創意工夫を要しないと認められる。原告が本願考案の可撓杆と引用例の針金について主張するところはいずれも理由がない。

3  以上認定の事実によれば、本願考案は、引用例の記載に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められ、これと同旨の審決の判断は相当であり、これを取り消すべき違法はない。

三  よつて、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却する。

〔編註〕本願の実用新案登録請求の範囲は左のとおりである。

本文に詳記するように胴部、腕部、脚部、頭首部等に分割し、ないし、それ等各部を更に数個に分割した人形等所求物品の芯構成体を設け、それ等分割個所を接続するに際し、要彎曲部の各部へアルミニウム杆その他の堅牢な彎曲、復元自在な可撓杆を挿通し、これによつて接続した人形等の芯体。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!